障害者グループホームの法的構造②|絶対に押さえておきたい人員基準のポイント
障害者グループホーム開設・運営にあたり重要なポイント8つ
障害者グループホーム開設・運営にあたり重要なポイント8つあります。この記事では、前回に引き続き、人員基準のポイントを解説して言います。
(3)人員基準のポイント
1.常勤
「常勤」は一般企業でいう、正社員のことです。正社員はどんな働き方をするでしょうか?正社員は、1週間で40時間働きます。法人はこの40時間を、32時間や44時間に設定することができます。
法人が、週休3日・週4日稼動で30時間が正社員だと決めたら、グループホームを運営していく際の「常勤」として換算されます。
ですが、今後は、分かりやすいように「常勤」は週40時間で計算していきます。
2.非常勤
「非常勤」というのは、「常勤に非ず」ということなので、週40時間は働かなり人です。
3.専従
「専従」は、その職務のみに従事する人です。例えば、管理者だったら管理者という職務のみの従事者です。
法律を読んでいくと、よく組み合わせられるのは、1の「常勤」と3の「専従」です。週40時間以上の労働時間で、その職務のみに従事する人のことを「常勤専従」と言います。
4.常勤換算
1の「常勤」というのは、1人で週40時間働く人のことをいいました。複数人で「常勤」と同じ時間数を働く人を確保している状態を「常勤換算」といいます。1週間で4時間働く人を10人確保したら、月40時間になるので、「常勤換算1」と計算できます。
上記の概念を覚えてもらわないと、シフトが作れないので、覚えてください。
(4)管理者のポイント
1.常勤であること
2.専従であること
さきほどの前提条件を理解していただいた上で、グループホームの管理者は、常勤であること、専従であることと規定されています。つまり「常勤専従」です。
ただ、赤字で書いてありますが、「業務に支障がない場合は除く」というのが、障害者総合支援法も介護保険法にも共通しています。ここで、全てがひっくり返されています。
なぜ、そういう風に書いているかというと、ここが霞が関文学のずる賢さです。国は法律としては、管理者は「常勤専従」であることを事業者に求めていますが、事業者が業務に支障がないと判断した場合は、その限りじゃないという言い訳なのです。
あくまでそう判断したのは事業者で、国は「常勤専従」を求めているという、言い逃れの条項になっています。グループホームの場合、管理者に他の業務を兼務させることに、支障はないのです。
3.法令順守管理
4.記録管理
5.人員管理
6.入居者管理
7.関連機関との連絡・調整
8.ご家族の相談支援
管理者は法令を守る、つまりコンプライアンス(法令遵守)し、記録を管理します。また、シフトなどの人員管理や入居者の管理、関連機関との連絡調整、ご家族の相談に乗ることが、主な業務です。
(5)サービス管理責任者とは?
グループホームに限らず、障害福祉サービス全般に言えることですが、サービス管理責任者(サービス管理責任者)が一番のネックになります。
資格としても重要ですし、サービス管理責任者の方は変わった人も多いので、マネジメントがとても大変なんです。ですが、資格を持っているから、しょうがないなと思って、みんなが我慢しているのが業界の実態です。福祉職についているから、いい人なんだろうという、淡い幻想は抱かないでください。どちらかというと、世話人や生活支援員として応募してくる人の方が、人柄としてはいい人が多いです。サービス管理責任者は、一癖も二癖もある人が多いので、前もって心に留めておいてもらえるといいと思います。
ですが、資格としては、非常に重要です。
1.入居者30人:常勤1名
入居者が30人に対して、常勤1名を配置しなければいけません。
2.入居者20名以上になったら常勤
ここは重要なポイントです。入居者が5人の事業所を4か所に出した場合、合計で20人になります。入居者が20人いたら、サービス管理責任者は常勤じゃなければいけませんので、気をつけてください。逆に、19人までだったら、サービス管理責任者は非常勤でも大丈夫です。
入居者を増やしていき、気付いたら20人を超えていたということは、弊社の直営事業所でもありました。ですので、定員の管理をしっかりしてください。
4.30:1=30:40時間▶10:0.333=10:14時間
入居者30人に常勤1名ということは、30:1ですね。1は「常勤」なので、40時間ですので、30:40時間。
入居者が10名だったらどうなるかというと、0.333人になります。0.333人×40時間=14時間なので、入居者が10人のときは、1週間で14時間、サービス管理責任者を配置すればいいことになります。
この部分は、障害者総合支援法の中で珍しくて、他の福祉サービスはサービス管理責任者を「常勤」で求められる中、グループホームだけは定員に応じて、「非常勤」も認められているという特殊なところです。
5.入居者のアセスメント
6.入居者の個別支援計画書作成
サービス管理責任者は、その入居者にどんなサービスが必要なのか、歩けるのか、金銭管理はできるのかといったアセスメントをします。そのアセスメントに基づいて、個別支援計画書を作ります。個別支援計画書というのは、本人がどういう将来像や目標を持っているかに対する総合的な指針です。その人に、どういう支援をしていくかという、大枠を決めます。
その大枠を実現していくために、金銭管理ができないといった個別の課題への支援策を考えます。金銭管理ができないと1人暮らしは難しいので、出納長を作りましょうといった、支援をすることになります。1つ1つの課題に基づいて、その支援をするのは誰か、いつまでに1人で出納帳を作れるようにしましょうかという計画を作っていきます。それら全ての課題が解決すると、その人はひとり暮らしができるというプランを、1人ずつ作るのが、サービス管理責任者の業務の1つです。
リアルな話をすると、ほとんどのサービス管理責任者は、現場で働いていた人なんですよね。現場で働いてきて、体力的につらくなってきたから、サービス管理責任者をなろうといった感じで、研修を受けるんです。ですので、高い人も当然いますが、そもそも計画を作る能力が低い人が多いです。高齢者介護のケアマネージャーもそうですし、障害福祉の相談支援員もそうですが、計画を作るのが苦手な人は多いです。
ずっと現場でやってきて、計画を作ったことがない、パソコンが使えないけど、サービス管理責任者だというのは、業界によくある話です。ですので、アセスメントに基づいて、個別支援計画書をパソコンできちんと作れるサービス管理責任者を採用できると強みになります。
7.入居者のモニタリング
アセスメントを取り、個別支援計画書を作って、それに基づいてサービスを提供した結果、その人がどうなりましたかというのが、モニタリングです。
結果、課題が解決された場合は、計画書に載っている課題を削除し、次なる高みに行くために必要な課題設定するというPDCAサイクルを回さなければいけません。
PDCAが何か分からないサービス管理責任者やケアマネが非常に多いので、教育が必要になります。サービス管理責任者協会(https://sabikan.or.jp/movie/)で、業務のやり方を動画で解説していますので、活用してください。
8.関連機関との連絡・調整
9.ご家族の相談支援
その入居者に関わる機関の担当者との連絡・調整役やご家族の相談にのるのも、サービス管理責任者の大切な業務です。
世話人
1.4:1or 5:1 or 6:1の中から選択可能
2.4:1の4は入居者数、1は世話人
3.4:1の1は「常勤換算」で1
4.常勤換算1とは複数人で常勤時間数(40時間)
他の障害福祉サービスでは人員の基準は、利用者何人に対し、どの役職者が何人ですと、ワンパターンで決められています。ですが、グループホームの世話人は、4(入居者):1(世話人)or 5:1 or 6:1の中から選択可能です。日中支援型グループホームには3対1という選択肢もあります。4対1の4は入居者の人数で、「常勤換算」で世話人が1人分という意味です。ですので、複数のパート勤務の世話人の労働時間を合わせて、1週間で40時間分あれば、1と換算されます。
つまり、4人対40時間・5人対40時間・6人対40時間の中から、選べるということです。
5.4:1=4;40時間=1:10時間
6.入居定員が1名増えるごとに10時間世話人を配置
入居者4人対常勤換算1だと、4対40時間になります。利用者1人にすると、1対10時間なので、入居定員が1増えると、1週間で10時間分、パートを増やせばいいことになります。世話人の配置が、4対1の場合は分かりやすいです。これが、5対1になると、5対40時間になりますので、入居者が1人増えたら、世話人を8時間配置することになります。世話人の配置を、1週間で8時間増やすと、5対1で算定できます。
7.掃除、洗濯、食事、相談etc
世話人さんの業務は、掃除・洗濯・食事・相談など多岐に渡ります。実際には、世話人が相談員みたいな仕事をしているパターンが多いです。
生活支援員
1.区分3以上の入居者がいる場合に配置
2.入居者が区分1と2の場合は配置不要
グループホームの場合は、区分が3以上の入居者がいる場合のみ、生活支援員を配置してください。区分1と2の人しかいないという場合は、配置しなくていいことになります。
3.区分3の入居者数÷9×40時間
4.区分4の入居者数÷6×40時間
5.区分5の入居者数÷4×40時間
6.区分6の入居者数÷2.5×40時間
障害区分3~6の場合には、上記のように計算します。区分3の人が何人いるかによって、配置しなければいけない時間数が変わってきます。例えば、障害区分3の入居者が2人だとすると、2÷9×40時間といった具合に計算します。
区分が上がれば上がるほど、割る数は小さくなっていきます。つまり、区分が高い人・重度な人が多いほど、生活支援員を多く配置しなければなりません。
7.食事、入浴、排泄などの介護
なぜ、上に書いたように、区分により生活支援員の人数を変えるのか。それは、生活支援員の業務は、食事・入浴・排泄などの介護だからです。ただ、区分3や4の方で、介護が必要な人は実際にはそんなに多くありません。それなので、現実には、世話人が生活支援員を兼務しているケースが多いです。
兼務している場合の勤務シフトは、〇時~〇時の間は世話人として勤務、〇時~〇時の間は生活支援員として勤務するといった表記をします。ただ実際の業務は、この時間は料理を作る、この時間は介護をするとは分かれておらず、入り混じっています。
夜間支援員
夜間支援員を配置するかしないかは、事業者が選べるようになっています。夜間支援員がいないグループホームもたくさんあります。
ただ、最近の入居者ニーズからすると、夜勤者がいた方がいいでしょう。弊社のグループホームでは、基本的に、夜勤者を配置するようにしています。
1.夜間に人員を配置すると加算が取得できる
2.加算を取得しなければ配置しないことも可能
サービス管理責任者には資格が必要ですが、世話人や生活支援員、夜間支援員は、資格は必要ありません。配置すると加算を取得できます。もちろん、配置しないことも可能です。
3.加算名称は「夜間支援等体制加算」
ただ配置しないと、夜間支援等体制加算が取得できません。
4.夜間支援等体制加算は、(1)(2)(3)の3種類
6.(1)は夜勤・(2)は宿直・(3)は警備会社委託
夜間支援等体制加算は、(1)(2)(3)の3種類に分かれています。
(1)は夜勤者を配置
(2)は宿直者を配置
(3)はセコムやアルソックなど、警備会社に業務委託
という違いがあります。
夜勤と宿直の違いは、夜勤が基本は起きていてください、何かあったら対応してくださいという役割なのに対し、宿直は起きていなくてもいいので、何かあったら対応してくださいという役割なところです。警備会社への業務委託は、何か通報があったら、対応してくださいというものです。
当然、夜間は起きていなければならない夜勤者を配置する方が、加算が高いです。業務が大変なほど、報酬は高くなります。
制度の問題点は、寝ていたか起きていたかは誰も証明ができないところです。これが制度的欠陥で、多くの事業者は(1)を算定しています。起きている人もいれば、寝ている人もいるという実態があります。
5.夜間とは「22時から翌朝5時」のこと
夜間というのは、22時から翌朝5時までを指します。この時間に人を配置していれば、夜間支援等体制加算の(1)(2)のいずれかが算定できます。起きていれば、(1)、寝ていれば(2)になります。
細かいですが、通達が出ている部分があります。夜間22時から翌朝5時の間、夜勤者に1時間休憩をしてもらいます。その1時間で、夜勤者が外出したい場合はどうしたらいいかというQ&Aが厚生労働省のホームページに上がっていました。それに対する、厚生労働省の答えは、基本は駄目ですというものでした。
ですので、夜勤者は1週間以上前に、この日の何時は外に出たいと上長に申請し、上長はその1時間を埋める人を1週間以内に確保しなければなりません。その時間帯に外出したい人は、ほぼいないと思いますが、そういう風になっています。
7.夜間支援等体制加算は建物ごとに算定
夜間支援等体制加算は、建物ごとに算定が可能です。例えば、10名の定員の物件、5名の物件、4名・3名・2名の物件があるとします。物件ごとに夜勤者を1人ずつ配置したとすると、ある建物は10人に対して1人の夜勤者、またある建物は5人に対して1人です。
こういった場合、建物ごとに算定ができ、夜間支援体制加算(1)(2)は、何人に対して1人の夜勤者を配置しているかで、加算単位数が変わってきます。当然、手厚いほど、単位数が高くなります。一番、手厚いのが2対1で配置するケースです。
また、5人定員の建物があって、その建物から、車で10分以内の建物が4人定員だとします。定員を合算すると9人になります。5人定員の建物に、夜勤者を1人配置していると、4人定員の建物には配置せずに済みます。9対1での管理が可能と言うことです。車で10分以内という限定はつきますが、加算の算定は可能です。
次回以降は、人員基準の総合ポイントや訓練給付費の算定について解説していきます。