障害者グループホームの法的構造③|これであなたも今日からシフト表が組める!|シフトの組み方で赤字にも黒字にもなる!法令違反を見分ける人件費率とは?
今回は、人員基準のポイントと実際のシフト表の作成例を解説します。
人員基準のポイント(総合)
各棟に夜勤者を1人ずつ配置した場合の図です。
本体の事業所から、車で30分以内の物件は住居追加ができます。夜勤や夜間支援体制加算は、車で10分以内の物件なら、夜勤者は両方の建物の夜勤ができます。ここは、ごっちゃになりやすいところなので、気を付けてください。
A市・B市・C市とありますが、本体の事業所から車で30分以内であれば、他の市の物件も、本体事業所に紐付けが可能になります。
例えば、大阪府吹田市の基準が厳しいなら、吹田市に隣接する市に本体事業所を出して、そこから車で30分以内であれば、吹田市の物件を紐づけることができます。
弊社の千葉県八千代市の物件も、道を挟んで、千葉市なんですよ。千葉市の基準は厳しく、中古の物件ではほぼできない状態なんです。ですが、八千代市の本体事業所に紐づけると、管轄するのは千葉市でなくて、千葉県になるので、基準が緩くなるんです。
シフト例
人員基準をシフト例にしたのが上の図です。
徳川家康さんが、管理者とサービス管理責任者と世話人を兼務しています。織田信長さんと豊⾂秀吉さんは世話人で、武⽥信⽞さんが生活支援員で、⻑宗我部元親さんと明智光秀さんが夜間職員です。
徳川家康さんのところから見ると、この人は、役職が3つに分かれています。サービス管理責任者の資格を持っていて、管理者もできるので、かなり優秀な人で、めったにいないレアなキャラクター設定になっています。管理者のところを見ると、管理者は常勤じゃないといけません。このグループホームは定員が8名なので、サービス管理責任者の計算でいくと、30対1でしたね。どういう計算なるか考えてみてください。
サービス管理責任者は、30対1なので、30分の8×40時間で、1週間に必要な時間数が計算できます。計算すると、サービス管理責任者は、1週間で11時間の業務をすることになります。
そうすると、家康さんは、管理者が1時間で、サービス管理責任者として3時間働きます。余った5時間を世話人として勤務してもらうというシフトになります。
定員数が増えるほど、サービス管理責任者としての業務時間が増えてくるので、その分、世話人としての業務時間は減っていきます。ここで注意しなければいけないのは、定員が20名を超えたら、サービス管理責任者は常勤になるところです。この図の2時間のところが、全て8時間になるわけです。その時点で、管理者と世話人の兼務はできなくなります。
この人員基準を破ってしまうと、大変なことになりますので気を付けましょう。
世話人のシフトはあまり難しいことはないので、説明は割愛します。
次に、生活支援員は、8名のうち障害区分3の人が2名、区分4の人が1名いるとします。その場合、下記のような計算式で算定します。
区分3 2名 9時間 2名÷9×40時間=8.88888…時間=9時間
区分4 1名 7時間 1名÷6×40時間=6.666666…時間=7時間
「小数点以下は繰り上げ」というルールになっていますので、8.11時間だとしても9時間と算定します。四捨五入ではなく、繰り上げ計算なので、気をつけてください。両方を足すと、生活支援員は、1週間で16時間、配置されることになります。
続いて、⻑宗我部・明智さんの夜勤は、夜間職員6時間と世話⼈ 2時間に分かれています。先ほど書いたように、22時~翌朝5時に人を配置していると、夜間支援等体制加算が取れます。22時~翌朝5時は7時間になりますが、労働基準法上は、6時間以上働かせると、休憩をあげなければいけません。ですので、夜間職員6時間と世話⼈ 2時間に分割し、1時間の休憩を入れて、実質労働時間は6時間になります。
実際は、21時に出勤してもらい、朝7時に帰ってもらうような時間設定をすることになります。21時~22時までの1時間は、服薬の管理や寝る際の声かけなど、世話人業務をしてもらいます。22時~翌朝5時までは夜勤です。朝5時~7時までの2時間のうち1時間は、朝ご飯の準備をしてもらうと世話人業務となります。
そうすると、前半1時間、後半1時間の計2時間は、世話人業務が生じます。夜は、1時間休憩を取ってもらい、6時間勤務です。合計すると、8時間労働になります。
そのようにすると、綺麗なシフトができあがります。夜勤者に、このスタイルに納得してもらうことが非常に大切となります。納得してもらえないと、就寝前の声かけ係と朝食を作る係を用意しなければならないので、納得してもらうのが、経営者の腕の見せ所です。
これが、一番効率のいい、シフトの組み方の例になります。これを読んだら、今日から、シフトが作れますので、よく覚えておいてください。
シフト例から算定した人件費と人件費率
シフト例から、事業所の人件費と人件費率を考えてみましょう。
シフト例の事業所
定員:8名
世話人:4対1
夜間職員:1名
立地:2級地(横浜)
入居者:区分2が5名 区分3が2名 区分4が1名
【売上高】
基本報酬:(292単位×5名+381単位×2名+467単位×1名)×11.28(地域単価)×30⽇(1か月)=909,957円
夜間⽀援体制加算:149単位×8名×11.28円(地域単価)×30⽇(1か月)=403,372円
合計:1,313,329円/⽉
この事業所には、1建物に8名の入居者がいるので、8(入居者)対1(世話人)を選択しています。
基本報酬が90万円、夜間支援体制加算で約40万になるので、合計すると約130万円の報酬を請求できます。この報酬プラス他の加算があるので、誤差が出ますが、このように計算します。家賃などは別途徴収しますので、あくまでも、報酬だけの売上高になります。
【人件費】
管理者兼サービス管理責任者兼世話⼈:300,000円(1名)
世話⼈:時給1,000円(224時間)
⽣活⽀援員:時給1,000円(64時間)
夜間職員:時給1,250円(168時間)
それに対する人件費は、管理者兼サービス管理責任者兼世話人は、横浜市なので、30万円と設定します。また、世話人は時給1000円、生活支援員は1,000円、夜間職員は時給1,250円だとします。
【1か月の人件比率】
管理者兼サービス管理責任者兼世話⼈:300,000円
世話人:時給1,000円×224時間分=224,000円
生活支援員:時給1,000×64時間=64,000円
夜間職員:時給1,250円×168時間=210,000円
合計すると、人件費がおおよそ798,000円になります。
それですので、この給付額に対する人件費率は、約60%です。
上記、売上高にプラスして、8名分の家賃・食費・水道光熱費が1人7万円だとすると、70,0000円×8名=560,000円/月が加わるので、1,300,000円+560,000円で、月1,800,000円ぐらいになります。
人件費率は、45%ぐらいになります。
【シフトの組み方で赤字にも黒字にもなる!】
ここで、非常に重要になるのは、グループホームの拠点数や定員数が少ない場合には、シフトの組み方ひとつで赤字にも黒字にもなるということです。
目安としては、家賃と報酬を合算した売上高に対する人件費率が、45%~55%ぐらいが適正です。売上高に対する人件費率が45%を下回っていると、おそらく人員基準違反をしているか、最低賃金を下回る不当な金額で人を雇っているかです。法令上の問題が出てきます。
逆に、高すぎる場合は、人員が余剰な状態である可能性があります。ですので、おおよそ、45%~55%の中で収まっているかで判断をしてください。